2012年3月19日月曜日

秘密のトンネルのような暗がり

先週の金曜日、楽しみにしていた小沢健二「我ら、時」展覧会を見てきました。
ご存じない方のために概要の冒頭を引用すると、こんな感じ。
秘密のトンネルのような暗がりで、写真を見て、音を聴いていただく展覧会です。

詳しくは、オフィシャルサイトをご覧いただくのがよいかと。
http://hihumiyo.net/
http://www.parco-art.com/web/museum/exhibition.php?id=468

それで、展覧会だけど、いや~、素晴らしかった。
展示されている作品そのものも良かったんだけど、ただの「有名人の写真展」なんかではなく、新しいことへの挑戦も含めてプレゼンテーションに工夫が凝らされていたのが、素晴らしかった。作り手の熱情がこっちにも伝わってくる。(以下、ネタバレ含みます)

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そもそも、胸に手を当てて考えてみると、一枚の写真を数分間にもわたってじっくりと眺め続けるなんてことは普段なかなかないことで、また、本に書かれた文章をゆっくりと音読する機会もほとんどない(子供に読んであげるのは別として。あ、それはそれで素晴らしい機会だな)。それに対して、この展覧会では、暗がりの中でスポットライトで照らされた写真を、超指向性スピーカーから小さな音で流れる音声(ただの環境音だったり語りだったり)にじっと耳を澄ませつつ、ゆっくりと眺める、という稀有な体験を与えてくれている。

エリザベスコールさんの写真と小沢健二氏の言葉は、季刊誌「子どもと昔話」の読者には、馴染みがあるものだけれども(実際、見覚えのある写真もあった)、文章を読むのと朗読を聴くのでは全然イメージが違うし、写真だってそれに寄せられた言葉などを聴きながらじっくり眺めているとまた違った味わいがあるものだ。

たとえば、正月のお餅の話。とても面白かったし、連載「うさぎ!」のどこかに出てきててもおかしくないようなエピソードではあるけど(実際あったかな?覚えてないな)、やはり本人の口から語られることで、面白さが数段アップしていたように思う。

あるいは、今回展示されていた写真の中で「海にボートが浮かんでいて、その上に3人ぐらいの人が乗っていて、やや遠くの海の上にはカモメらしき鳥が群れている」という写真があったんだけど、そのうちの3羽のカモメの翼が重なり合うようにして、数学的にというか自然科学的に美しい形状を作り出していることに、その写真を眺め始めて1分後ぐらいに気がついたんだけど、いつものような見方だときっと見落としていたんだろうな、と思う。ああ、カモメはこの画の主役ではないけど、それでもこの瞬間を捉えたんだな、みたいなことを考えたりして。

また、技術面として、超指向性スピーカーで、シャワーのように音を降らせる(っていう表現、だれが最初にしたんだろう。実に的確な表現ですね)というアイディアが素晴らしい。単に、会場内を静穏に保つだけでなく、来場者が(それも見知らぬ者同士が)肩を寄せ合って音の聞こえるスウィートスポットに耳を近づける、あるいは遠慮し譲り合うという状況を、自然に作り出している。特に東京なんかでは普通見られないような、暖かい雰囲気が醸し出されていた。

ただ、敢えて言うと、できれば、スピーカーのチューニングをもうちょっと頑張ってもらって、3人ぐらいが一度に聴けるようなセッティングを出してほしいところ。僕が行った時に関して言えば、3~4人で肩を寄せ合って聴けるような理想的なチューニングがされているものもあった一方、どう頑張ってもぎりぎり1人しか聴けないでしょ、っていうのもあったので、混雑時にそこがボトルネックになってせっかくの暖かい雰囲気が台無しになってしまわないかと気がかりなところだった。

帰りには併設のポップアップショップ(ミュージアムショップ的なもの)で、自分と妻のためにTシャツを1枚ずつ購入。最近5歳になった娘はオザケンの歌が大好きなので、キッズTシャツがあれば買って帰ってやりたいところだったのだが、願い叶わず(行く前から分かってたけど)。娘が「ずるーい」とか言いそうなので、Tシャツとオザケンの関係性は隠しつつ、何か別のプレゼントを用意しておこう。そういえば、ぼちぼち帰省先から戻ってくることになってる。

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(誤変換に気付いたので訂正します。誤「我等、時」 → 正「我ら、時」

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